「問い合わせが多い」「マニュアルを読まれない」「研修しても定着しない」。こうした状態は、利用者の能力ではなくWebサービスやシステムの設計に原因があることが少なくありません。使いにくさは見た目の問題だけではなく、前提知識、情報量、導線、エラー時の案内不足など、UX全体の設計から生まれます。この記事では、自社サービスが分かりにくくなる原因を整理したうえで、UI改善だけで終わらない見直し方を解説します。
この記事の要点
使いにくさとは、操作が多いことより「考え続けないと進めない状態」を指す
原因の多くは、ユーザーではなく、作り手の前提や画面設計の置き方にある
ボタンや配色の調整だけでは、使いにくさの根本は解消しにくい
改善では、原因の裏返しとして改善原則を定め、そのあとで実装手段を考える順番が重要である
「使いにくいサービス」とはどんな状態か
「使いにくい」と聞くと、操作が複雑、画面が古い、デザインが洗練されていない、といった印象を持たれがちです。しかし実際には、見た目が整っていても、ユーザーが迷い続けるサービスは少なくありません。
使いにくさの本質は、ユーザーが目的を達成するまでに、必要以上に考え続けなければならないことです。言い換えると、「次に何をすればよいか分からない状態」が続くと、サービスは使いにくいと感じられます。
次に何をすればよいか分からない
たとえば、会員登録のあとに何を設定すべきか分からない、申込フォームの途中で次の操作が読めない、といった状態です。
ユーザーは機能の一覧を見たいのではなく、自分の目的を早く達成したいと考えています。そのため、画面の中で次の一歩が明確でないだけで、難しいサービスだと感じやすくなります。
用語や選択肢の意味がその場で理解できない
作り手には当たり前の業務用語や機能名でも、利用者には初見の言葉であることがあります。特に業務システムやBtoBサービスでは、社内用語やデータ構造に寄った表現が、そのまま画面に出てしまうこともあります。
このときユーザーは、操作そのものではなく、「この言葉は何を意味するのか」を解釈することに認知負荷を使います。結果として、入力や意思決定のスピードが落ち、迷いが増えます。
間違えたときの戻り方や対処法が分からない
エラーが出ても原因が分からない、修正箇所が分からない、どこに戻ればよいか分からない。この状態も、使いにくさを強く感じる場面です。
ユーザーはミスを嫌っているのではなく、ミスしたあとに立て直せないことに強い不安を感じます。エラー時に次の行動が見えない画面は、それだけで使いにくいサービスになりやすいものです。
自社サービスや業務システムが分かりにくくなる7つの原因
使いにくさは偶然起きるものではなく、設計の積み重ねによって生まれます。
ここでは、よくある原因を7つに分けて整理します。
1. 作り手の知識が前提になっている
最も起きやすいのは、社内では通じる前提が、そのまま画面に出てしまうことです。
管理者には分かる用語、開発側には自然な分類、営業やCSには常識の補足事項でも、新規ユーザーには通じないことがあります。こうした知識差が埋まらないまま画面が作られると、ユーザーは操作より先に解釈でつまずきます。
2. 業務都合で画面が設計されている
入力項目や画面遷移が、ユーザーの理解順ではなく、社内の業務フローやデータ管理都合で並んでいるケースです。
作り手側には合理的でも、ユーザーにとっては「なぜここでこれを聞かれるのか」が分からず、負担だけが先に立ちます。業務システムで使いにくさが残りやすいのは、このズレが起きやすいためです。
3. 情報量が多すぎる
説明不足を恐れるあまり、最初から多くの情報を見せすぎることがあります。
選択肢、注釈、例外条件、注意文が一度に並ぶと、必要な情報よりも、どれを読めばよいかを判断する負荷のほうが大きくなります。情報を足すほど親切になるとは限りません。
4. 初心者と熟練者を同じ画面で扱っている
初回ユーザーに必要な説明と、既に慣れたユーザーに必要な情報は違います。それにもかかわらず、全員に同じ案内、同じ導線、同じ文量を見せると、どちらにとっても中途半端な体験になります。
初回には説明が足りず、熟練者には画面が重くなる。この両方が同時に起きると、使いにくさの声は消えにくくなります。
5. ユーザーの目的ではなく機能単位で設計されている
サービス提供側は機能を単位に考えやすい一方で、ユーザーは「予約したい」「申請したい」「設定を終えたい」といった目的単位で動いています。
そのため、機能一覧としては整っていても、目的達成までの道筋が見えないと、ユーザーは回遊しながら考え続けることになります。機能が豊富でも、目的に沿っていなければ使いやすさにはつながりません。
6. エラー時の説明や次の行動が分からない
「入力内容に誤りがあります」「設定に失敗しました」とだけ表示されても、ユーザーは次に何を直せばよいか分かりません。
エラーは避けられないものですが、原因の説明と次の一歩がなければ、ユーザーは操作そのものに不信感を持ちやすくなります。使いにくいと評価されるサービスには、この立て直し設計の弱さがよく見られます。
7. ユーザー行動を分析せずに改善している
最後は、改善の進め方そのものの問題です。
問い合わせが多い、離脱が起きる、定着しない、といった症状があっても、実際にどこで止まっているのかを見ないまま改善すると、施策は感覚論になりやすくなります。ボタンを大きくする、文言を変える、説明を足す、といった変更を重ねても、原因に当たっていなければ成果は安定しません。
分かりにくさを改善する5つの原則
ここまでの原因を見ると、使いにくさは見た目だけの問題ではなく、何をどの順番で見せるか、どの瞬間に補足を出すか、どこで迷いやすいか、といった設計全体を見る必要があります。ここからは、原因の裏返しとして改善原則を整理します。
①専門用語や前提知識をその場で補えるようにする
用語や条件の意味を別ページで探させるのではなく、その場で理解できる状態を目指します。
たとえば、難解な用語に補足をつける、入力項目の意図を短く説明する、選択肢ごとの差を比較しやすくする、といった考え方です。ユーザーに覚えてもらうより、その場で分かるほうが使いやすさにつながります。
②一度に見せる情報を減らし、操作を段階化する
最初からすべてを理解させようとせず、今必要な判断だけに集中できる状態をつくります。
複雑な手続きや設定では、ステップを分ける、初回だけ案内を厚くする、後から確認できる、といった工夫が有効です。情報量を減らすとは、省略することではなく、順番を設計することです。
③目的と習熟度に合わせて導線を分ける
初回ユーザーと熟練ユーザーでは、必要な支援が異なります。
そのため、初回は丁寧な案内を出し、慣れたユーザーには素早く進める導線を用意するなど、習熟度に応じた出し分けが必要です。目的別に入口を分ける考え方も、使いにくさの解消に有効です。
④エラー時に原因と次の行動が分かるようにする
エラーはなくせなくても、不安は減らせます。
どこが問題か、何を直せばよいか、次にどこを見ればよいかが明確になるだけで、ユーザーは操作を続けやすくなります。成功導線だけでなく、失敗したときの戻し方まで設計することが重要です。
⑤行動データを見ながら小さく改善を続ける
使いやすさは、一度の改修で完成するものではありません。
どこで離脱したか、どの説明が読まれたか、どこでエラーが多いかを見ながら、小さく直して検証を続ける必要があります。改善の成否を感覚ではなく、行動データで見られるようにすることが、再現性のあるUX改善につながります。
Onboardingなら既存画面でも始められる改善
ここまで見てきたように、分かりにくさの原因は見た目の問題だけではありません。前提知識、情報量、導線、エラー時の案内不足など、設計全体にまたがっています。
こうした改善原則は、必ずしもシステムを全面改修しなければ実現できないわけではありません。既存画面にガイドやヒント、AI支援を追加することで、段階的に改善できるケースもあります。
チュートリアルガイドやヒントで迷いを減らす
たとえば、初回だけチュートリアルを出す、複雑な操作にはステップガイドを出す、難しい用語にはその場で補足をつけることができます。
ユーザーが迷うタイミングで「必要なタイミングに必要な情報を届ける」発想が重要です。
入力や判断を補助する
画面上の操作方法の案内だけでは足りない場面が多くあります。例えば、意思決定や判断の補助などです。Onboardingでは生成AIをサービス上に設置して入力補助や検索補助、質問対応を加える方法もあります。
どのように記載すればいいのかわからない、といった入力をAIがアシストしユーザーの入力負荷を削減します。
分析で改善を回す
改善施策は、表示して終わりではありません。
どの案内が使われたか、どこで離脱が起きたか、どのページで迷いが集中しているかを見ながら、改善を回す仕組みが必要です。低頻度利用のサービスほど、毎回ユーザーが慣れてくれる前提を置きにくいため、ヒントや導線改善の効果を見ながら調整できる状態が重要になります。
まとめ
自社サービスが「使いにくい」と言われるとき、原因はユーザーの理解不足ではなく、知識差や導線のズレ、情報の出し方、エラー時の案内不足といった設計側の問題にあることが少なくありません。だからこそ改善でも、見た目のUI修正だけで終わらせず、何を満たせば迷いが減るのかという改善原則から整理することが重要です。
Onboardingでは、ガイド、ヒント、AI支援、行動分析を組み合わせながら、既存画面の上から段階的にUX改善を進めやすくできます。全面リニューアルの前に、まずはどこでユーザーが迷っているのかを可視化し、小さく改善を回したい場合は、改善方針の整理からご相談ください。







