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カスタマーサクセス活動でROIをどう証明する?顧客と追う4つの中間指標と設計方法

公開日:

最終更新日:

2026/7/30

カスタマーサクセス活動でROIをどう証明する?顧客と追う4つの中間指標と設計方法

カスタマーサクセス活動でROIをどう証明する?顧客と追う4つの中間指標と設計方法

取締役COO

藤原タケフミ

株式会社STANDS取締役COO。ノーコードでWebサービスのユーザー体験を改善する「Onboarding」を提供。営業・CS・マーケティングを統括し、生成AIを活用したサービス改善と事業成長に取り組んでいます。

藤原タケフミ

株式会社STANDS取締役COO。ノーコードでWebサービスのユーザー体験を改善する「Onboarding」を提供。営業・CS・マーケティングを統括し、生成AIを活用したサービス改善と事業成長に取り組んでいます。

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「ログイン率も機能利用率も上がっている。だから、この顧客は順調なはず」
CSの現場では、そう考えることは少なくありません。

もちろん、SaaSが日常業務で使われていることは大切です。
しかし、契約更新のタイミングで顧客からこんな質問をされたら、どう答えるでしょうか。

 「このツールを導入して、結局何が良くなったんですか?」

「ログイン率は90%です」「重要機能の利用率は80%です」と答えても、それだけでは十分ではありません。
顧客が知りたいのは、「どれくらい使われたか」ではなく、「使った結果、仕事がどう変わったのか」だからです。

例えば、

  • 月次レポートの作成時間が2時間短縮した

  • 入力ミスが減り、差し戻しが少なくなった

  • 空いた時間で顧客への提案が増えた

こうした変化が積み重なって、最終的に売上や利益、コスト削減といった成果につながります。

一方で、売上や利益は営業施策や組織変更、市場環境など、SaaS以外の要因でも大きく変わるため「売上が伸びたのは、このSaaSのおかげです」と証明するのは簡単ではありません。

だからこそCSでは、最終的なROIだけを追うのではなく、その手前で起きる仕事の変化を顧客と一緒に確認しながら、成果の根拠を積み上げていくことが重要です。

この記事では、そのための考え方と、中間指標の設計方法について解説します。

この記事の要点

  • ログイン率や機能利用率だけでは、顧客に提供した価値やROIは説明できない

  • ROIは「利用 → 業務改善 → 事業成果」の積み重ねで生まれる

  • CSが追うべきなのは、ROIの手前にある「仕事の変化」

  • 「定着・効率・品質・成果接続」の4つで整理すると、顧客と成果を共有しやすい

  • 中間指標を継続的に追うことで、更新時にもROIを根拠を持って説明できる

ROIについてはこちらの記事も参照ください。
テックタッチツールの費用対効果はどう算出する?ROIの計算式とKPI設計 

なぜSaaS単体でROIを証明するのは難しいのか?

ROIというと、「売上が増えた」「利益が改善した」「コストが削減できた」といった最終的な成果を思い浮かべる方が多いでしょう。
もちろん、それらは重要な指標です。

しかし、SaaSを導入したからといって、翌月から売上が伸びるとは限りません。まずは現場で使われるようになり、仕事の進め方が変わり、その変化が積み重なって、ようやく事業成果につながります。

つまり、多くのSaaSでは次のような流れで価値が生まれます。

CSが直接支援できるのは、この「業務が変わる」部分です。

だから更新直前になってROIを計算しようとしても、「導入前と比べて何が変わったのか分からない」という状態になりがちです。
成果を説明するには、導入直後から仕事の変化を継続的に確認しておく必要があります。

また、ツールを導入しただけで成果が出るわけでもありません。
例えば、入力作業を効率化する機能があっても、現場が従来のやり方を続けていれば効果は生まれません。
反対に、ツールをうまく活用しながら業務フローも見直せば、同じ機能でも成果は大きく変わります。

つまり、最終的なROIは

  • SaaSが提供した価値

  • 顧客自身が取り組んだ業務改善


この両方が組み合わさって生まれます。
そのため、「ツールだけの成果」と「運用改善による成果」を切り分けながら説明することが重要です。

「使われている」と「価値が出ている」は違う

ここで勘違いしやすいのが、「利用されている」と「価値が出ている」は同じではないということです。

例えば、重要機能の利用率が80%あっても、その操作に時間がかかり、入力ミスや手戻りが増えているのであれば、本来期待していた成果には近づいていません。


一方で、ログインは月に1回だけでも、その1回で重要な業務を短時間かつ正確に終えられているなら、そのSaaSは十分に価値を生み出していると言えます。

つまり、ログイン率や機能利用率で分かるのは、「使われているか」です。
「仕事が改善されたか」までは分かりません。
利用状況はあくまでスタート地点です。

CSが本当に確認したいのは、「利用した結果として、仕事がどう変わったのか」です。

ROIの手前で見るべき「仕事の変化」とは?

では、「仕事が変わった」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。

例えば営業支援SaaSなら、

  • レポート作成時間が短くなった

  • 入力ミスが減った

  • 顧客分析に使える時間が増えた

  • 提案件数が増えた

といった変化が考えられます。

このような変化が積み重なり、その先で売上や利益の改善につながります。
この記事では、この仕事の変化を「中間成果」と呼びます。
そして、その変化が本当に起きているかを確認するための数字を「中間指標」と呼びます。

例えば次のような関係になります。

ここで重要なのは、先に数字を決めないことです。

「何を測ろうか」と考え始めると、ログイン率や利用率など、取得しやすい数字を選びがちです。
しかし、それでは顧客が本当に得られた価値は見えてきません。

まず考えるべきなのは、「顧客の仕事をどう変えたいか」です。
そのうえで、その変化を確認するための数字を選びます。

つまり、

仕事の変化を決める

その変化を測る数字を決める

という順番で設計することが大切です。

CSが追いたい4つの中間指標

ここまで、「ROIをいきなり追うのではなく、その手前にある仕事の変化を見ることが大切」という話をしてきました。

では、その変化は何を見ればよいのでしょうか。
顧客ごとに細かな指標は変わりますが、多くのSaaSでは確認したいポイントは共通しています。

それが、次の4つです。

この4つは、それぞれ独立した指標ではありません。
本来は、一つの流れとしてつながっています。

例えば営業支援SaaSなら、

「毎日使われるようになった(定着)」

「レポート作成時間が短くなった(効率)」

「入力ミスや差し戻しが減った(品質)」

「空いた時間で提案件数が増えた(成果接続)」

「受注が増えた(ROI)」

という流れになります。

このように考えると、「今どこまで成果が出ているのか」「次に何を改善すればよいのか」が見えやすくなります。

1. 定着|業務の中で当たり前に使われているか

最初に確認するのは、「ちゃんと使われているか」です。
ただし、見るべきなのはログイン回数ではありません。

本当に知りたいのは、「成果につながる使い方ができているか」です。

例えばレポート作成SaaSなら、

  • データ連携が完了している

  • テンプレートが設定されている

  • 月次レポートを毎月出力している

こうした一連の流れが定着して初めて、「業務に組み込まれた」と言えます。
逆に、毎日ログインしていても、重要機能を使っていなければ、成果にはつながりにくいでしょう。

だからCSでは、「どの機能を使ったか」ではなく、「成果につながる行動ができているか」を確認します。

2. 効率|仕事はラクになったか

定着したら、次に確認するのは効率です。
ここでは、「仕事がどれだけラクになったか」を見ます。

例えば、

  • 作業時間が短くなった

  • 処理件数が増えた

  • リードタイムが短縮した

  • 手作業が自動化された

などが代表的な指標です。

ただ、「時間が短くなった」だけで終わらせるのはもったいありません。
大切なのは、空いた時間で何ができるようになったかです。

例えば、

  • 顧客分析に時間を使えるようになった

  • 提案準備に時間をかけられるようになった

  • 品質チェックを丁寧に行えるようになった

こうした変化が、次の成果につながります。

3. 品質|仕事の精度は上がったか

仕事は速くなっても、ミスが増えてしまっては意味がありません。
そこで確認するのが品質です。

例えば、

  • エラー率

  • 差し戻し率

  • 再問い合わせ率

などは分かりやすい指標です。

一方で、「仕事が安心してできるようになった」「上司への確認が減った」といった変化は、数字だけでは見えません。
こうした変化は、アンケートやインタビューも活用しながら確認します。

ただし、現場の感想だけで判断するのではなく、業務データと組み合わせて見ることが大切です。
「数字」と「現場の声」の両方がそろって初めて、品質の改善を説明しやすくなります。

4. 成果接続|事業成果につながる行動は増えたか

最後に見るのが、事業成果につながる行動です。
ここでは、売上そのものではなく、その一歩手前の行動を確認します。

例えば、

  • 提案件数

  • 商談化率

  • 有望顧客へのアプローチ数

  • アップグレード対象顧客への提案数

などです。

ここで注意したいのは、「提案件数が増えた=ROIが出た」ではないことです。
提案が受注につながるまでには時間がかかることもあります。

だからこそ、「提案が増えた」「その後、受注も増えた」という流れを継続して確認していくことが重要です。

4つすべて追う必要はない

ここまで読むと、「全部測らないといけないのか」と感じるかもしれません。

そんなことはありません。

顧客によって目標は違うため、本当に必要な指標だけを選べば十分です。

例えば、

  • バックオフィス業務なら「効率」と「品質」

  • 営業支援なら「成果接続」

  • オンボーディングなら「定着」

を重視するケースもあります。

大切なのは、「その数字が改善すると、最終的にどんな成果につながるのか」を説明できることです。

中間指標は、顧客と共通認識を作るためのもの

中間指標は、顧客を評価するためのものではありません。

「今どこまで進んでいるのか」

「次は何を改善すればいいのか」

をCSと顧客が同じ目線で話すための共通言語です。

更新時になって慌ててROIを説明するよりも、日頃から仕事の変化を一緒に確認しておく方が、顧客にも納得してもらいやすくなります。

共通パターンを作り、顧客ごとに調整する

顧客ごとに目標は違いますが、自社サービスで起こりやすい仕事の変化には共通点があります。

例えば、

  • 重要機能が定着する

  • 作業時間が短くなる

  • エラーが減る

  • 提案活動が増える

といったパターンです。

こうした共通パターンをあらかじめ整理しておけば、サクセスプランを毎回ゼロから考える必要はありません。
ただし、そのまま当てはめるのではなく、

  • 顧客が導入した目的

  • 対象となる業務

  • 決裁者が重視する成果

に合わせて指標を調整することが大切です。

支援が終わったら、「どの中間指標が成果につながったか」を振り返り、共通パターンへ反映します。
この積み重ねが、CSチーム全体のプレイブックを育てていきます。

中間指標からROI証明につなげる3つのステップ

ここまで、「ROIは仕事の変化を積み重ねた先にある」という考え方を紹介してきました。

では、実際のカスタマーサクセスでは、どのように運用すればよいのでしょうか。
ポイントは、「成果を測る」「改善する」「価値として伝える」の3つを繰り返すことです。

Step1. 最初に「成功の定義」を顧客と決める

ROIは更新直前になって考えるものではありません。

導入が決まった段階で、「何が改善すれば成功なのか」を顧客とすり合わせておくことが重要です。

そのときは、いきなり売上や利益を目標にするのではなく、その手前にある仕事の変化から考えます。

例えば営業支援SaaSなら、

このように整理しておくと、「どこまで進めば成功なのか」を顧客と共有できます。
もし導入前のデータがない場合は、導入直後の数週間を基準値として計測しても構いません。

重要なのは、後から数字を探すのではなく、最初から測る準備をしておくことです。

Step2. 数字だけでなく「現場の声」も集める

中間指標が変化しても、「なぜ変わったのか」は数字だけでは分かりません。

例えば重要機能の利用率が下がったとしても、

  • 操作が難しかった

  • 必要性を感じなかった

  • 社内ルールで利用できなかった

では、取るべき対応がまったく変わります。

そのため、

  • 利用ログ

  • 作業時間

  • エラー率

といった定量データだけでなく、

  • アンケート

  • インタビュー

  • 定例会でのヒアリング

など、現場の声も合わせて確認することが重要です。

数字と現場の声を組み合わせることで、「改善すべきポイント」が見えやすくなります。

Step3. 確認できた変化を「価値」として伝える

仕事の変化が確認できたら、それを顧客に分かりやすく伝えます。
時間短縮なら、工数相当額に換算すると伝わりやすくなります。

例えば、

月20時間削減 × 時間単価3,000円 × 12か月

であれば、

年間72万円分の工数相当額になります。

ただし、ここで注意したいことがあります。
これは「72万円の人件費を削減した」という意味ではありません。

人員や外注費が実際に減っていないのであれば
「72万円相当の余力を生み出した」
と表現する方が適切です。

その余力で、

  • 顧客への提案時間が増えた

  • 品質確認に時間を使えた

  • 問い合わせ対応を改善できた

と説明すると、ROIとのつながりも理解してもらいやすくなります。

月次レビューとQBRでは伝える内容を変える

同じデータでも、誰に報告するかによって見るポイントは変わります。

場面

主な相手

重視する内容

月次レビュー

現場担当者・運用責任者

利用状況、課題、改善アクション

QBR

決裁者・事業責任者

仕事の変化、事業成果への影響、ROI

現場担当者が知りたいのは、
「次に何を改善すればいいか」
です。

一方で、決裁者が知りたいのは、
「この投資でどんな価値が得られたか」
です。

そのため、QBRでログイン率だけを報告しても、追加契約や契約更新の判断材料にはなりません。
「業務がどう変わり、その結果どんな価値が生まれたのか」まで伝えることが重要です。

Onboardingツールを活用すると計測しやすい

こうした取り組みを進めるうえで役立つのが、Onboardingツールです。
画面上のガイドやチュートリアルを通じてユーザーの利用を支援するだけでなく、

  • ガイドの利用率

  • 離脱箇所

  • 特定機能の利用状況

  • アンケート結果

なども取得できます。

つまり、

「使われているか」
だけでなく、
「どこでつまずいているか」

まで把握しやすくなります。

もちろん、OnboardingツールだけでROIを証明できるわけではありません。

売上や工数、商談数など、顧客が持つ業務データと組み合わせることで、「利用が仕事の変化につながった」というストーリーを説明しやすくなります。

カスタマーサクセスのROI証明でよくある質問

中間指標はいくつ設定すればよいですか?

最初は2〜4個程度で十分です。

重要なのは数ではなく、「この数字が改善すると、どんな成果につながるのか」を説明できることです。

DAUやMAUだけでROIは説明できますか?

できません。

DAUやMAUは利用状況を把握するための指標です。

ROIを説明するには、「利用した結果、仕事がどう変わったか」まで確認する必要があります。

売上への貢献を切り分けられない場合は?

無理に「このSaaSが売上の○%を生み出した」と説明する必要はありません。

仕事の変化と、その先に起きた成果を時系列で示すだけでも、十分な説明材料になります。

作業時間が減ったら、そのままコスト削減と言えますか?

必ずしも言えません。

人員削減や外注費削減につながっていなければ、「工数相当額」や「創出できた余力」と表現する方が適切です。

中間指標は改善したのにROIが出ない場合は?

その場合は、「仕事の変化」と「事業成果」の間に別の課題がある可能性があります。

例えば、

  • 営業プロセス

  • 提案内容

  • ターゲット顧客

などを見直す必要があるかもしれません。

中間指標は、「どこで止まっているか」を見つけるためのヒントでもあります。

まとめ|ROIは「一緒に育てるもの」

SaaSのROIは、契約更新の直前に作るものではありません。

導入時に「どんな成果を目指すのか」を決め、その途中で起きる仕事の変化を顧客と一緒に確認していくことで、少しずつ説明できるようになります。

そのためには、
利用される

仕事が変わる

事業成果につながる

ROIとして説明できる
という流れを意識することが大切です。

CSの役割は、単に活用を促進することではありません。
顧客と一緒に成果を整理し、その価値を言葉とデータで説明できる状態をつくることです。
中間指標を「感覚」ではなく「数字」として継続的に追えるようになると、契約更新の場面で慌てて根拠を探す必要がなくなります。


Onboardingでは、ガイドの利用率や離脱箇所、機能ごとの活用状況を機能活用レポートで可視化できるため、「定着」から「効率」「品質」までの変化を数字で確認しながら、顧客と同じ目線で成果を共有していくことができます。

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