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2022年01月08日
カスタマーサクセス(CS)のKPI設定、指標と運用のポイント

目次
カスタマーサクセスを成功に導くためには、定量で可視化することができる指標をKPIとして設定し、定期的に計測することが必要不可欠です。ではどのようなKPIを設定すれば良いのでしょうか。
本記事では、カスタマーサクセスを目標達成に導くためのKPI指標例の説明と、算出方法から運用のポイントまでをご紹介します。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
そもそもカスタマーサクセスと、カスタマーサポートでは役割が異なります。
カスタマーサクセスとは、顧客がサービス導入による課題解決を成功させることを目的として、契約後に能動的に伴走を行う組織を指します。顧客に対して様々な側面から働きかけ行うため、多くのKPIがあります。
一方で、カスタマーサポートは基本的に受動的に顧客からの問い合わせに対して回答を行うこと、またその組織を指します。そのため、カスタマーサポートでは、問い合わせに対していかに早く(一次応答時間)、顧客の求める回答をすることができたか(課題解決率)、などがKPIとなります。
カスタマーサクセスにおける3つの重要KPI
①LTV(顧客生涯価値)
LTVとはLife Time Valueの略で、顧客がサービス利用を通じて、支払う金額の合計を指します。
つまり、スポットで一度きり月額費用を高く利用する顧客よりも、継続的に最終的な契約金額が金額が高い顧客の方がLTVが高くなります。
SaaSビジネスはサブスクリプションであるため、サービス継続がLTV向上への大きな鍵となります。よって、多くのカスタマーサクセスでKPIとして設定されているのです。
算出方法はいくつかありますが、主に以下のように算出します。
【LTVの算出方法】
・LTV = 平均顧客単価 ×平均顧客購入回数 × 平均契約継続期間
・LTV = MRR(平均月間経常収益金額)× 収益率 ÷ 顧客月次解約率
➁解約率
カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレートとは顧客数の新規加入数に対する、解約数の割合のことを言います。ここでの解約とはプラン変更やアカウント数の削減に伴う顧客単価の低下を含みます。
一般的にチャーンレートは、カスタマーチャーンを指すことが多いです。
【カスタマーチャーンレートの算出方法】
カスタマーチャーン=期間内の解約数÷期間内に新規契約した顧客数
※期間は必ず揃えて算出をしてください
レベニューチャーンレート
レベニューチャーンレートとは収益金額をベースとした解約率のことを指します。
損失額を重視する「グロスレベニューチャーンレート」と、損失額だけでなくアップセル/クロスセルを加味した「ネットレベニューチャーンレート」の2種類があります。
【グロスレベニューチャーンレートの算出方法】
グロスレベニューチャーンレート=期間内の総損失額÷ 期間内の総収益額
【ネットレベニューチャーンレートの算出方法】
ネットチャーンレート=(サービス単価 × 期間内の解約数)÷ 期間内の総収益額× 100(%)
ネットレベニューチャーンレートがマイナスになることをネガティブチャーンと言います。
ネガティブチャーンは解約やプラン変更などで収益が減少するよりも、期間内のアップセルやクロスセルによる収益の増加が上回っていることを表すため、顧客が継続利用することで事業成長を続けることができる見込みであることがわかります。これに加え、新規顧客からの収益を継続的に獲得することで、事業成長をさらに加速させることができます。
③オンボーディング完了率
オンボーディングとは、顧客がサービスに定着し「自走」するまでの活動のことを指します。SaaSサービスにとって一番最初の大きなハードルがサービスを理解し運用開始することです。初期のオンボーディングがしっかり完了できていると、サービスと通した成功体験を感じることができ、継続したサービス利用につながるため、様々な指標に好影響を及ぼすことができます。
【オンボーディング完了率の算出方法】
オンボーディング完了率=期間内にオンボーディングが完了している顧客数 ÷ 期間内の全顧客数
オンボーディングが完了しているという状態の定義はサービスによって異なるため、「基本機能を自走して利用することができる」「初期に必要な設定が全て終わり分析ができる状態」といった定義を策定する必要があります。
>オンボーディングに関する詳しい説明はこちら
カスタマーサクセスの重要KPIを達成するために必要な6つの指標
ここまで、カスタマーサクセスの代表的なKPIについて説明してきました。ここからは上記KPIを算出するために必要な指標の算出方法や、数値を向上するために合わせて計測すると効果的な指標をご紹介します。
①アップセル/クロスセル率
カスタマーサクセスでは導入後にいかに顧客のポテンシャルを最大化し、顧客あたりの単価を上げることができるかということも大きなミッションの一つです。特にサービスに複数プランや、別のサービスがある場合には注目すべき指標です。
「アップセル」とは、同じプランやサービスでアカウント数を増やしたり、別機能を追加で加入してもらうなどして、顧客単価を向上させることを指します。
「クロスセル」とは、同じ顧客に対して別サービスでの申し込みを獲得することを指します。
【アップセル/クロスセル率の算出方法】
アップセル/クロスセル率=期間内にアップセル or クロスセル した顧客数 ÷ 期間内の全体の顧客数
➁リテンション率
リテンション率は顧客維持率とも呼ばれ、既存顧客がサービスに定着した割合を指します。
リテンション率を計測することで、新規獲得した顧客がどれくらいのLTVとなるのか予想数値を算出することもできます。
【リテンション率の算出方法】
リテンション率=継続顧客数÷新規顧客数×100(%)
③NRR(売上継続率)
NRRとは売上維持率のことを指します。
NRRは月毎に計測することが多く、MRR(月次経常収益)を元に算出します。つまり月額で決まっている売上と
【NRR(売上継続率)の算出方法】
NRR(売上継続率)=当月の合計MRR+ 当月にアップセル/クロスセルしたMRR + 新規契約 MRR – 当月にプランやアカウント数変更により減少した MRR – 有料解約を解除した MRR ÷ 当月の合計MRR
④NPS®︎
Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)の略称で、「顧客ロイアリティ」を可視化することができる指標です。
「このサービスを知人に紹介したいですか?」などの質問に対して0~10の11段階で回答してもらい、その平均値を出すことで算出することができます。
サービスに対する愛着度合いがわかるため可視化し、向上させることで様々な指標に好影響をもたらします。
※Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
⑤CSAT(顧客満足度)
CSATは顧客がサービスに対してどの程度満足しているのかを示す指標です。CSATは主に顧客のサービスに対する感情的価値を可視化するもので、一般的に「非常に満足」「満足」「どちらでもない」「不満足」「非常に不満足」の5段階のアンケートで計測します。
⑥アクティブユーザー率
アクティブユーザー率は、サービスを継続している顧客のうち、実際にサービス活用を続けている顧客数を指します。SaaSサービスはサブスクリプションサービスのため、既に利用していないが、契約だけ続けているといった顧客もいます。このような顧客はサービスを活用しきれていないことが多いため、今後解約につながる可能性が高くなります。
アクティブユーザー率を向上させることで、継続的にサービス価値を感じることができるようになるため、解約を防いだり、活用できていない課題を明確にすることでアップセルや、クロスセルに繋げることもできます。
カスタマーサクセスのKPI設定のポイント
定期的に確認し、優先度などを見直す
KPIは設定することがゴールではなく、定期的そして継続的に計測することが大切です。また、会社やプロダクト全体のKGIに応じて、KPIを設定することで会社全体の目標に貢献することができます。また、全ての指標を満遍なく追うのではなく優先度を決めて計測することで、目標設定を行うことが向上の鍵になります。
定期的に効果計測ができPDCAを回すことができる指標を設定する
プロダクトによっては、効果測定ができない指標もあります。あくまで定期的に数値計測が可能で、PDCAを回しやすい指標を設定することで、モチベーションも担保することができ目標達成に繋げやすくなります。
達成可能なKPIを設定する
あまりに高いKPIを設定すると、チームのモチベーションが上がらず、具体的な施策に落とし込むことができないまま、形だけのKPIになってしまう原因になります。最低限ラインのゴールと、少し背伸びしたストレッチゴールを設定することでハイパフォーマンスを促すことができます。
KPIに合わせて評価を行う
KPIを達成しても、個人やチームの評価に繋がらないとモチベーションを維持することが難しくなります。
KPIの達成度や貢献度に合わせて、人事評価を行うことで納得感のある評価につながり、従業員満足度を向上することにも繋がります。
顧客のサービスを通した成功体験に寄り添ったカスタマーサクセスを
カスタマーサクセスで最も大切なことは、「顧客目線」で施策を実行することです。
常にいかに顧客がサービスを通して成功に繋げることができるかを考えることが全ての指標の向上に繋がり、具体的な施策にも繋がります。
KPIを形骸化した指標にせず、生きた指標にするためにもチーム内で定期的に見直しを心がけましょう。また行動施策をどのKPIの向上を目的とするのかを示すことで、貢献度の可視化が可能になります。
自社のサービスや、チームの成熟度に合わせたKPIを設計することがカスタマーサクセスを成功する鍵につながります。
【Onboarding】
Onboarding(オンボーディング)は、ウェブサービスにユーザーを導くガイドを設置するUI/UX改善ツールです。
エンジニアのリソースを使わず、ノーコードで簡単にチュートリアル、ヒントなどのガイドを作成することができます。
ユーザー属性や利用状況を分析し、データをもとにした施策を実行・改善といった、PDCAに必要な機能をワンストップで提供しています。
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