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2022年05月24日
SaaSプロダクトにおけるユーザーオンボーディングのプロセスとは?カスタマーサクセス担当者が把握しておくべき3つのポイント

カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは
SaaSのカスタマーサクセスにおける「オンボーディング」とは、新規ユーザーが「自走」状態でサービスを活用できるまで導くプロセスのことです。
ここでいう「自走」とはすなわち、ユーザーがサービスの使い方や仕様を理解し、自身の手でサービスを操作・利用することで、価値を実感できている状態を言います。
なお、本記事で扱うオンボーディングは従業員の戦力化を促す人事施策ではなく、システム活用におけるユーザーのオンボーディングを指します。
ユーザーセグメントやサービスの特性によって、最適なオンボーディングの手法はさまざまです。しかしサービスの内容に関わらず、機能や活用方法を早期に理解してもらうことは有益です。利用初期からユーザーに成功体験を提供でき、SaaSにおいて特に重要性の高い継続率の向上などに寄与します。
「顧客ライフサイクル」におけるオンボーディングの意義についても触れておきましょう。顧客ライフサイクルのフェーズ分けにはさまざまなものがありますが、SaaSの利用を開始後、価値を実感し、一定期間の継続利用に至るまでの流れを「導入期」「活用期」「定着期」に分けたとしましょう。オンボーディングは「導入期」から「活用期」へのステップアップをサポートします。
以下の図から分かるとおり、顧客ライフサイクルは段階的に進むものです。導入期から活用期への移行に失敗すると、サービスを継続的に利用してもらうことは困難になります。そのため、カスタマーサクセスの最初の第一歩を成功させるファクターとして、オンボーディングは重要なのです。

カスタマーライフサイクルのフェーズ
この記事では、オンボーディングの「プロセス設計」に焦点を当て、
・オンボーディングのプロセス設計の重要性
・プロセス設計の具体的なステップ
・プロセス設計で抑えておくべき3つのポイント
以上の3点について解説していきます。
なぜオンボーディングのプロセス設計が重要なのか
まずは、SaaSプロダクトのオンボーディングにおけるプロセス設計の重要性について、理解しておきましょう。
ユーザーが「プロダクトの価値を実感できている状態」に導くことがオンボーディングの目的ですが、その完了状態の定義はプロダクトの性質や理想的な使い方、顧客のニーズやビジネス的に目指すフェーズなどにより異なります。
プロダクトによりふさわしいオンボーディングの完了状態がさまざまだからこそ、完了状態の定義を含めたプロセス設計が重要です。ゴールを定義した上で、ゴールから逆算して何を・どのタイミングで・どのレベルまで行うかを明確に設計することで、ユーザーのサービス理解と活用、定着につなげることができます。
オンボーディングの完了状態は、新規ユーザーを定着させ解約率を下げる効果が見込めるラインを見極め、設定すべきです。詳細は、次項の「オンボーディングのプロセス設計ステップ」にて説明していきます。
オンボーディングのプロセス設計ステップ
ここからは、オンボーディングのプロセス設計を行う際の具体的な手順を説明します。
①ユーザーの業務フローを理解する
最初に行うべきことは、ユーザーが対象のSaaSプロダクトを活用する業務フローの把握です。そもそものサービス開発時に留意すべきことでもありますが、ユーザーの業務フローを正しく理解しないことには、ユーザーが業務の中で解決したい本当の課題を捉え、その解決に適した価値あるプロダクトを提供することはできません。
プロダクト自体が価値あるものになっていることは大前提として、オンボーディングの役割はその価値を新規ユーザーに「伝える」ことにあります。いくら優れた機能を持つプロダクトでも、ユーザーがその価値を理解できなければ意味がありません。プロダクトを活用すると業務フローの中の「どんな課題を」「どのように」「どうすれば」解決できるのか、オンボーディングにおいてユーザーに明確に伝えることが重要です。
加えて、課題解決は一足飛びに進むものばかりではありません。したがってオンボーディングにおいても、プロダクトを活用することで段階的に業務改善を行っていくステップに沿ったサポートが求められます。ユーザーが「課題がある状態」から「最終的な理想の状態」に至るまでの各ステップの状態も明確にしておきましょう。ユーザーが何を・いつまでに・どのレベル感で達成したいと考えているのか、ユーザーの業務上のKGI・KPIも把握した上でサポートできると理想的です。
このように、サービス開発時のみならずオンボーディングのプロセス設計においても、ユーザーの業務フローへの深い理解が不可欠と言えます。
②オンボーディングのゴールと期間を設定する
次に行うのは、オンボーディングの完了状態、すなわちゴールの定義です。前述のとおり、完了の定義はサービスや顧客のニーズにより異なります。
定性的な成功・定量的な成功の両方を、明確に定義できることが理想です。定性の定義については、サービスのヘビーユーザーをモデルにするとよいでしょう。ユーザーインタビューなどを行い、ヘビーユーザーがどのようにサービスを活用しているのか確認しましょう。
定量的な指標としては、KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。KGIとは最終的なゴールを示す指標であり、KPIとはゴールに至るまでのプロセスの達成度を評価するための指標です。
オンボーディングの最終目的はユーザーの定着を促進し、収益を最大化することにあるため、KGIとしては例えば以下のような指標が考えられます。
・LTV(顧客生涯価値)
・NRR(売上継続率)
・CRR(顧客維持率)
・チャーンレート(解約率)
・アップセル・クロスセル額
過程を評価するKPIの具体例としては、以下のような指標があります。
・初期設定の完了割合
・初期設定が完了するまでの時間
・機能の利用回数
・サービスの利用時間数
・アクティブユーザー数
KGI・KPIの達成度を測ることで、オンボーディング施策の費用対効果や課題を把握しやすくできます。カスタマーサクセス実現に向けた次の取り組みを検討するためにも、適切な指標設定は重要です。
なお、ゴール設定においては「期間」も重要なファクターです。各指標をいつまでに達成すべきかを考慮しましょう。長期間オンボーディングが未完了であれば離脱可能性が高まりますし、新規ユーザーが契約直後で利用意欲の高い内を狙って初期登録などの実施を促すほうが効果的です。
③オンボーディングの具体的な手段を決定する
オンボーディングの最終的なゴールと、期間も考慮し細分化したプロセスごとのゴールを定義した後は、ゴール達成のために適切な手段を検討しましょう。
オンボーディング施策の費用対効果を最大化するためには、想定されるLTV(顧客生涯価値)別に顧客を分類し、各セグメントに適したアプローチを行うことが効果的です。期待できるLTVが最も大きい顧客層・中間層・最も小さい層にセグメント分けし、「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3種類のタッチポイントを使い分けましょう。
LTVが大きい顧客に対しては、担当者によるマンツーマン対応や顧客の事情に応じたサポートのカスタマイズなど、手厚い「ハイタッチ」の対応を行うことで確実な囲い込みにつながります。
中間層の顧客には、対人とテクノロジーの両方を用いて、コストを押さえつつカスタマーサクセスを支援しましょう。具体的には、コールセンターやメール受付による対応などが「ロータッチ」の例として挙げられます。
LTVが最も小さい顧客層は、一般的にユーザー数が多くなります。最小限のコストで多くのユーザーのオンボーディングを成功させるために、テクノロジーを活用しましょう。サービス画面上に行うべき作業を示すガイドを表示したり、自分でサービスの使い方を学習できるヘルプページを設けたりするのが「テックタッチ」の例です。

ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ
④設計したプロセス通りに実施・改善する
オンボーディングのプロセス設計を完了し施策を実行した後は、定期的な進捗のチェックが重要です。
設定したゴールに対して未達があれば、ユーザーの問い合わせやサービスの利用データなどから何が課題かを探りましょう。PDCAのサイクルを回してオンボーディングのプロセスを改善しつづけることで、ユーザーの離脱を減らしサービスへの定着を促進することにつながります。
オンボーディングのプロセス設計におけるポイント
ここからは、プロセス設計時に抑えておくべき3つのポイントについて解説します。
①ユーザーに合ったオンボーディングを実施する
ターゲットユーザーの特性やニーズにマッチしたサポートを行うことが何よりも重要です。繰り返しになりますが、ユーザーがプロダクトを通して解決したい課題や達成したい目標を高い解像度で理解した上で、プロセス設計を行いましょう。
同じく重要ですが見落とされがちなのが「ユーザーのリテラシー」です。せっかくサービスの理解・活用を助けるコンテンツを準備しても、ユーザーに理解されなければ意味がありません。特にテックタッチの場合、人の手による臨機応変な対応が難しい分、オンボーディングを助けるコンテンツ自体がアクセスしやすく簡単に理解できるものになっているかに留意しましょう。例えば、ユーザーの導線上に表示される利用方法のガイドなどは、ユーザーが自ら情報を探しに行く必要がないため、有効な方法の一つです。
②顧客の状況を継続的に把握する
オンボーディング施策実行後にさらなる改善を行っていくためには、顧客からフィードバックを得る必要があります。オンボーディングのプロセス設計時に、ユーザーのサービス活用状況のデータを取得・分析できるツールの導入や体制づくりもあわせて検討しましょう。
サービスへのアクセス数や機能の利用回数など定量的なデータはもちろんのこと、サービスをどのように活用してどんな効果がもたらされたかや、サービス活用における困りごとなどの定性的なデータも重要です。フォローコールやアンケート、ユーザーインタビューなどの手法を用いて、ユーザーとのコミュニケーションを維持しましょう。オンボーディングのプロセス改善のみならず、コミュニケーションを通した顧客の信頼感醸成にもつながります。
③「機能説明」だけではなく「効果・価値の説明」も行う
ありがちなのが、プロダクトの操作方法の説明に終始してしまうことです。まずは「この機能を使うことでどんなメリットがあるか」が理解できないことには、そもそもユーザーはその機能を使う気になりません。「機能」と「効果・価値」はセットで説明しましょう。
機能のアップデート時は、既存ユーザーに対するオンボーディングの施策を行うことも忘れないでください。「新しい機能を試してみたい」と思えるような、価値の紹介と操作の解説をあわせて行いましょう。
まとめ
本記事では、オンボーディングのプロセス設計に着目し、その重要性や具体的なステップ、留意すべきポイントについて解説しました。
オンボーディングの成功は、新規ユーザーの定着を促し、SaaSプロダクトにおいて重要なLTVを向上させる第一歩です。ターゲットユーザーの特性やニーズを捉えて、適切なオンボーディングのプロセス設計を行いましょう。
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